【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 二】

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「『月夜の道化師』だ。懐かしいなぁ、この曲。  やっぱり今日あたり到着すると思ってたんだよね。うーん、デザートはもったいないけど、行こう!」  ギンコがそう言うなり立ち上がった。 「メルー、レオナ! ボクらはもう“テント”に行くから!  君らも後から来るだろ!? デザートはもういいからさ、ごちそうさまでした!! スズ、行こう!」  何だかよく解らないが、ギンコが早口でまくし立てながら、すでにウッドデッキの階段を何段か下りているので、スズも慌てて席を立った。  昼食代のことがほんの少し頭をよぎったが、たぶんこれもギンコのおごりなのだろう。  厨房の方に向かって振り向きながら「ごちそうさまでした!」とペコリとお礼をして、急ぎ足でギンコの後を追う。  階段を降りると、この界隈の表通りに出た。  なんとなく何が売っているのか解る店と、良く見ても何を売っているのかさっぱり解らない店が立ち並んでいる。 「ああ、これからたくさんのネコたちが集まる場所に行くからね、仮面はしっかりつけといたほうが良いよ。  それから紹介したい人たちがいるから、そのつもりでね」  ギンコはそう言いながら、自らも仮面をつけている。  何だか良く解らないことだらけだが、とりあえず言われた通りに仮面をつけた。  いつもは跳ねるように歩くギンコだが、今回はちょっと早足だ。  大通りをまっすぐに歩いていくと、徐々にネコたちが増え始めた。  こんな格好だから逆に目立つのではないかと思ったが、意外にも似たような道化師の服や仮面をつけたネコたちもいる。  ネコたちは一つの方向に向かって歩きながら、「やっと帰ってきたね」、「元気だったかな」などと話している。  どうやらみんなに広く知られている者たちが帰ってきたらしい。  五分ほど歩くと、建物の間から白い天幕のような物が見え始めた。  天幕のある方向に向かって小高い土地になってゆくとともに、見えている景色が建物から緑に変わり、それが開けた場所になる。  午前中に通ってきた、子供たちがいた自然公園が、さらに五倍以上も拡がったような場所だ。  そこにはすでに多くのネコたちが集まっていた。  その向こうにはサーカス用の巨大な白テントが張られている。
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