【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 二十一】

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 それまで呆けたように聞いていたフーカは、ようやくスズが何を伝えようとしてくれているのかを悟った。  そして声をあげて泣き出した。  慰めるつもりが余計に泣かせてしまった事にうろたえたスズは、また一気にまくし立てた。 「それでさ、地球で『チューリップ』って言ったら『オランダ』で、オランダって言ったら『風車』なんだよ!   だからさ、たぶんその遠くの方に写ってるのは風車で……」  それから小さな声で付け加えた。 「……よくあるんだよ、きっと、オランダだと風車に巻き込まれるだとか……。  そういう風に怪我することも」  嘘は嫌いだ。  だけど自分が知らないだけで、本当にそういう事もあるかもしれないじゃないか。  フーカはその言葉を聞くと今度はぴたりと泣き止んだ。  そして、袖で涙を拭いながら、しゃくりあげるように口にした。 「……良いの、知ってる。  そっちの世界には、『虐待』っていうのが、あるって。  調べたの、風雷石を使って、水の国の王立図書館で。  だからあたし、それから怖くて使えなくて……」 「バカだよね、忘れちゃってた、初めから風雷石で写真探せば良かったんだ……」  泣きながら笑い始めた。  そしてまた声をあげて泣いた。 「……だからね、怖かったの。  もしあたしのお母さんが、こんな優しそうな人が、そんな風になっちゃうなら、あっちの世界は、どんなに酷くて、哀しい所なんだろうなって。  あたしは一人でこっちの世界に逃げて来ちゃったけど、お母さんはどうなったんだろう、それで良かったのかな、って」  しばらくして落ち着いてきたフーカはネットに腰かけ、自分の想いをぽつりぽつりと語り始めた。
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