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「やはりこれは天罰なのだろうか」と、泣きわめく小さな悪魔を見て俺は思う。
短くなった煙草を灰皿で潰して、新しい一本に火をつける。
いつになったらこの悪魔は娘の体から出て行くのだろう。
酒場で口さがない連中が言っていた。
本当に俺の子供なら、俺と同じ黒い髪の子が産まれていたはずだと。
こいつの髪は俺の愛した彼女によく似た金色だ。
顔も良く似ている。
俺がこの世界で唯一愛して、そして失った、彼女に。
それともそもそも彼女が魔女だったんだろうか。
俺が家を空けている最中に、他の男と寝るような。
最初から騙されていたんだろうか。
こいつは肉体さえも悪魔が宿した子なんだろうか。
そしてまた最初の考えに戻る。
彼女を、愛する妻を失ったのは、俺が彼女を無理やりあの島から連れ出したせいなんだろうか?
彼女は、オランダ領の、小さな島の村の出身だった。
元々は海軍から追われて逃げ落ちた、海賊たちが集まって作った村だったらしい。
海賊らしくというか何というか、彼女が生まれ育ったあの島の信仰の対象は、他所では『悪魔』と言われている、海と風を操る、『Forcalor』《フォルカロル》という神だった。
グリフォンの翼を持つ人の姿で現われるというその神は、人を溺れされせ、海軍の船すら転覆させる力を持つという。
旅をして珍しい物を観て廻るのが好きだった俺は、あの島を訪れ、巫女をしている彼女に出会った。
そしてお互いに、一目で恋に落ちた。
ヨーロッパの小さな港町で孤児として育った俺は、正真正銘、生まれついての天涯孤独だった。
だから彼女が、どんな生まれで、どんな立場の人間だろうと、俺の方はまったく構わなかった。だが彼女の方は違った。
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