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ＥＲＲＯＲゼロ：エラーアース

時空旅行事業は、当初順調な滑り出しを見せたかに思えた。
しかし、旅行解禁からわずか１年で、人類はあることに気づいた。

過去に旅行で訪れた者たちがその時代の歴史に不用意に介入したことで、未来で大きな歴史の歪みが発生し始めたのだ。

例えばこの本で説明しよう。
ここに一冊の本がある。
300ページのこの本が地球の歴史を記した初版本だ。

この初版本が人類の歴史第1号だとしよう。
この作品は作者の気まぐれにより、増刷の都度、些細な加筆修正を繰り返している。
そして今回、作者が「15ページ目の記述を変えたい」と考えたとしよう。
作者はそのページだけ自然な形で変更したつもりでいる。

しかし、実は当初その15ページ目には200ページ付近に向けて小さな伏線が張られていたとしたら。
物語の軸はめちゃくちゃになり15ページから200ページの間で発生した矛盾を取り除くため、膨大な作業が必要になる可能性もある。
そうやってこの本は2版、3版と内容の上書きがされてきた。
美しい初版本の原型は良い方にも、悪い方にも振れながら次々と変化していった。