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息子に授乳するため、ショッピングモールの授乳室に入った。
そこは、カーテンで仕切られている個室ではなく、椅子が並んだ大部屋タイプだった。
向かいの椅子に、新生児ほどの赤ちゃんを抱いた女性が座っている。
ケープも付けず、授乳している気配もなく、ただ静かに座っている。
「赤ちゃん、寝ちゃったのかな?」
さして気に留めず、マザーズバッグからケープを取り出し、肩にかける。
ブラウスのボタンと授乳用ブラのホックを外し、息子をケープの中に滑り込ませると、直ぐにごくごくと喉を鳴らしながら母乳を飲み始めた。
ホッと一息ついて、ふと向かいの赤ちゃんに目をやると、小さな手足がだらりと力無く下がっている。
「え…?」
ハッと顔を上げると、女がじっとこちらを凝視していた。
目が合う。
女は、“にたあっ”と笑った。
顔に笑いを貼り付けたまま、女はすうっと立ち上がり、ゆっくりとこちらへ向かって歩いてくる。
反射的に逃げようとしたが、息子がまだケープの中で母乳を飲んでいることに気付く。
動けない。
動けない。
動けない。。。
だ れ か …
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