赤いアルバム

　あのアルバムはどこにあるのかと思う時がある。
　幼稚園から高校生までの写真を収めた表紙が真っ赤なアルバムがあった筈だ。
　高校を卒業して都会で暮らし始めてから実家に帰る機会が少なくなり、帰っても両親と他愛無い話をするだけでそのアルバムを見る事はなかった。
　会社勤めをしてから飲み会などの写真が増えてきたので小さなアルバムを買った。
　休日にアルバムに写真を貼っている時にふと赤いアルバムを思い出した。
　実家に電話した。
　「母さん、俺の子供の時のアルバムそっちにある？」
　私が訊くと母は少し考えて、
　「さあ、見ていないわね。あんたが持って行ったんじゃないの？」
と面倒くさそうに答えた、
　私は今度の連休に帰ったらアルバムを探す事にした。
　実家に帰ると父は町内会の旅行に行って留守だった。
　帰ってさっそく部屋の机の引き出しや周りの棚を探したがアルバムはなかった。
　次に押し入れを開けた。
　衣装ケースを引っ張り出して探したがそこにもアルバムはなかった。
　狭い押し入れの中をくまなく探したが結局見つからなかった。