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次の日の午後、居間でテレビを見ながら母と他愛ない話をしていた。
「もういい歳なんだから結婚しなさいよ」
「仕事が忙しいから…」
私はお菓子をつまみながら答えた。
「全く、あんたより年下の美香ちゃんは子供が二人いるっていうのに…」
「えっ、あいつと比べている?」
「いや、そういう訳じゃないけど…」
私が少しムッとした顔で言ったので母は言葉に詰まった。
「別にいいよ。気にしていないから」
「そうかい…」
会話が途切れて気まずい空気が漂った。
「昔の事って結構忘れているな」
私は何となく呟いた。
「何だい急に。仕事がつらいのかい?」
「いや、アルバムをどこに置いたのかさえ思い出せないから他にも忘れている事があるんだろうなって」
「仕方ないよ。歳を取ればそうなるし昔はよく思い詰めていたからね」
「そうだった?」
私は何気なく母の顔を見た。
「高校を卒業する前にも何か思い詰めていたでしょ?訳は聞かなかったけど」
「そうだったかな…」
私はボソッと答えて考えた。
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