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「それでね、まったく嫌になっちゃうわよ」と上司の悪口を言った一方で、もう片方が年のせいか化粧のノリが悪いと愚痴をいっていた。
オンナ二人がまったく違うことを話しているにもかかわらず、会話が何となく成立しているのだ。
「不思議なものだ」とスグルは思った。
「うるさいな」と見ているとひとりの気の強そうな女性が睨み返してくるではないか。
慌てて新聞のほうに目をやる。「全くどういうことだ」とスグルは思った。
これではこちらが悪いような感じじゃないかと思いながらも気の強い女性に弱いスグルは何も言えず黙って英字新聞を読んでいるフリをした。
神楽坂の通りから離れた閑静な静かな場所に位置しているカフェ「クリームレモン」
店の雰囲気とマスターのいれるコーヒーが好きで営業という名目でさばって、よく来ていた。
世界的なコーヒーチェーン店をもつスター・ボックス、
その本社があるアメリカワシントン州のシアトルで勤務歴10年の経験があり、帰国後は自分の理想的なカフェ店をもちたいと考えていたマスターの河野さんが二年前にひっそりとお店を開いた。
神楽坂を徘徊しているスグルも目にとまってから、お気に入りのお店となり、しょっちゅう入店していた。
店の雰囲気も良かった。
落ち着いた雰囲気で白と黒で基調されていた。
観葉植物が適当な場所に配置してあり、そこはそこで空間がまた変わるようだった。
コーヒーは世界のコーヒー豆生産地からの情報を河野さんが昔の同僚から仕入れており、
多くの種類は普段はおいていないが、河野さんのおすすめの豆はどれも絶品で
焙煎豆をミルで挽く段階にでる香ばしさといったら、たまらなくいいにおいだった。
店内で注文してからのんびりと河野さんが入れくれるコーヒーをまつというのも鈍感で違いの分からないハゲ男、スグルにも分かるくらいだった。
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