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「こんなところで何をしているんだい?」
俺の目の前にはおっさんが立っている。
身長は俺より少し高いくらいで、40~50代くらいだろうか、精悍な顔つきをしており、きちんと整えられた口髭が印象的だ。それほど歳がいってるようには見えないが髪も髭も白かった。
ある程度裕福なのだろう、清潔感があり、きちんとした身なりをしている。
最も、この世界の経済事情はさっぱりわからないので俺の元の世界の基準だが。
ナルが消えた後、軽くパニック状態になった俺はどうしていいかわからずあたふたしていたが、もうどうにでもなれと腹をくくって開き直ったらある程度心を落ち着けることができた。
隠れてやり過ごすという手もあったが、この世界についてわからないことだらけだったし、敵意はない、とのことだったので接触してみることにしたのだ。
なによりこの世界の情報が欲しかった。
しばらくすると木々の奥から草を踏みしめる音が聞こえてきたので、そちらに目を向けると、1人の男性が少し警戒しながら歩いてくるのが見えた。
手には剣を持っている。
俺は念のため剣から目を逸らさず、ゆっくり男性の方に身体をむけた。無防備を装うが、いつでも対処できる。
男性は5m程の距離まで近づき歩みを止める。俺が丸腰なのを確認すると少し警戒心を緩めたようだ。
そして場面は冒頭に戻る。
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