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プロローグ
どこまでも広がる灰色の空。
辺りは黒々とした岩山で囲まれ、地面も同様の岩で覆われており、生物はおろか植物の類すら見受けられない。
「死の土地」
1年中切れ間のない分厚い雲に覆われ、日光が差し込む時間はほんの僅かしかなく、中心にそびえる一際巨大な岩山の頂上には恐ろしい魔物が住むと言い伝えられている。
当然周辺の住民も全く近づかず、日光も、水さえもない環境からこの土地は「死の土地」または「悪魔の地」として恐れられてきた。
その地の中心部、まさに魔物が住むと言われる岩山の頂上で人知れず激しい戦いが繰り広げられていた。
猛烈な爆発音。
舞い上がる硝煙と粉塵の中から、1人の男が姿を現した。
黒い髪に黒いコート、黒いシャツに黒いズボン、ブーツまでも黒い全身黒づくめの男。
前髪は長く、左目は完全に隠れている。
右目はかろうじて見えているが、その目は赤く、獰猛な輝きを放っていた。
形のいい唇がつり上り、歯をむき出しにした強烈な笑みをたたえている。
男はフラフラと、しかし強い意志をもった足取りで一歩を踏み出す。
コートの色で目立たないが、ところどころ血が滲み、破れている。
男はボロボロだった。
「楽しいな、神様とやら」
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