プロローグ

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男に相対するのは黒い塊、この世の考えうる全ての邪悪を具現化したような、巨大なゲル状の塊だった。 それは一見すると卵のような形で、時折ぶよぶよと動く。 その表面からは何十本もの触手が生えており、針のように尖ったもの、鉤のように返しのついたもの、鞭のようなものなど様々な形をとっていた。 『ほざけ、人間風情が』 どこから発声しているかわからないが、その声は確かに塊の中心から聞こえた。 表面には触手しかなく、目や耳などの感覚器官の類は見当たらない。 「その人間風情に…お前は殺されるんだよ!」 塊がブヨリと揺らめいた。 表面が激しく波打ち、触手が一斉に男に向かって伸びる。 男は後ろに飛び攻撃を回避するが、触手は男の立っていた地面を抉ると向きを変え、男に追撃を加えようと伸びていく。 「さっきから気持ちわりぃんだよ!」 伸びていた触手が男から2メートルの距離に入った刹那、派手な音を立てながら触手が次々と爆発し四散していく。 それでも何本かは爆発を免れ、男の身体に新たな傷を作っていく。 「くそがぁ!」 一本が肩を貫き、さらに男の心臓を狙って伸びてきた触手をギリギリで掴むと再び爆発が起こり触手が千切れて吹き飛ぶ。
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