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加減がわからなかったのでそこそこ強めに魔力を流したのだが、無尽蔵に増幅された俺の魔力は必要以上の速度をもたらしていた。
速すぎる…!ぶつかる?!
目の前には傷男の胸元、首もとから見えるぐらい毛むくじゃらで気持ち悪い…じゃなくて!
俺はとっさに右足を前に出し、傷男の腹を蹴り飛ばした。
「オグェッッ!?」
傷男は身体をくの字に曲げながら吹っ飛んでいき、木を2~3本へし折って岩にぶつかり、ようやく止まった。
ここまでコンマ1秒。
周りからしたら俺が急に消えて、傷男がいきなりぶっ飛んだようにしか見えなかっただろう。
一瞬の出来事に、グランも含めその場の全員が凍りついていた。
「は…?お、お頭ぁ!」
我に帰った野盗の1人が傷男の方に駆けていく、他の奴らはまだ固まったまま呆然とそれを見ていた。
戦いの場において、隙を見せたら死ぬ。
油断しても、見た目に騙されても、死ぬ。
掌に魔力を集中させる。
こいつらじゃ役不足だが、この世界にきて初めての、これが俺の初陣だ。
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