父の死

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 休戦条約が締結されて一年あまりが経った。  我が国ギムレーはようやく戦渦の混沌から立ち直りつつある。だが、敵国ニヴルも最近は動向が怪しまれており、この平和も長く続くかは疑問視されていた。  そんな折、一人の兵士が私の家にやってきた。何の用だろうか。女である私が徴兵されるはずもない。「あの一族」以外は、戦場で戦うのは男と決まっているからだ。もっとも、噂や伝説でしか聞いたことが無い話なので、そんな一族など実在はしないのだろうが。  私の元へ訪れた兵士は、粗野な傭兵とはまるで違っていて、立ち振舞いの行き届いた人だった。身なりも上等で、帽子には王冠を模した意匠が施されている。  間違いない、この人は……。国王陛下の近衛兵だ。
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