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近衛兵から、父の姿を聞かされた。
「戦場の只中で、ケイト殿の父君の存在は大きかったそうだ。兵士の精神面でのケアを十全にこなし、死した者は丁重に弔った。一時の休みもなくね。戦場の矢面に立たない従軍牧師とはいえ、その働きは値千金の価値があっただろう」
父は、そんなこと少しも教えてくれなかった。誇らしく思うとともに、一抹の寂しさのような感情を覚えてしまう。
「我が国ギムレーは劣勢に追い込まれ、それはケイト殿の父君の属していた部隊も例外ではなかった。だが、一人の『英雄』の働きによって戦況は覆ったんだ」
「たった一人で?」
「そうだ。『ラフティーナの一族』と言えば、ケイト殿も聞いたことがあるのではないかな?」
「あれは伝説やおとぎ話の類では……」
「いいや、もはやその後裔はごくわずかとなったが『ラフティーナの魔女』は今も存在する」
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