がれきの海

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 ぼくらは、いつこのがれきの海ができたのか、そのがれきのはじめてできた時代のことを、知らない。 ただ、ぼくらのひいおじいさんの代から、その歌声は一回もとぎれることなく、このがれきの海のそこまでひびいて、くらいくらい船ぞこで必死に息をしているぼくらのような人間にも、ずっと希望の光をとどけてくれていたのだった。  がれきの海とはいうけれど、ここに海水なぞ存在しない。 聞いた話では、どこぞのかがやく星の中には、いろんないきものの願いによってできた海もあるというが、それに対して、このがれきの海はというと、さしずめ絶望によって満たされた海とでも言ったところか。 けれども、人は時として、絶望にさえすがりつこうとする。
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