幸せのアルバム

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幸せのアルバム

 二年前に祖父が介護施設に入って以来、周りに住む人も少ない山中のこの家には誰も住まなくなっていた。父どころか祖父が子どもの頃から住んでいる家で、木造の家屋にはあちこちガタが来ている。住む人がいなくなったところで、父はここを土地ごと売る気でいた。父にとっての実家で、幼いころの記憶がたくさん残る大切な場所だけれど、周りに管理をしてくれる人もいなければ、自分で手入れをするためには車で片道二時間以上となってしまう。荒れ果てた家を見るよりは、売ってしまう方がいいのだと父は決心していた。  本当なら、祖父が介護施設に入ってすぐに土地を売るはずだった。けれど、介護施設に入ることを決めてすぐ、土地を売る話を父が祖父にするよりも早く、祖父が言ったのだ。 「墓にはいる前に、もう一度ここに帰らせてくれ。死んだ後でもいい。最後はここで寝たいんだ」  以来、僕と父は年に数回この父の実家を訪れて、家の中の掃除や庭の手入れをしている。夏休みが終わろうとしている今日も、父の運転する車に乗ってやって来ていた。     
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