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「あなたは、結、さん。人ではなくて……」
「何を気まずくなっておる? 妖怪に妖怪と言うのは失礼なことではないぞ」
そう、彼女は妖怪だ。幽霊でもお化けでも神でもなく、彼女は妖怪。その差なんて僕には全然わからないけれど、とにかく彼女が妖怪だということは理解している。
「その様子では、お主見える方ではないな。霊でもなんでも、儂のようなものを見るのは初めてじゃろう」
「そう、ですね」
少しばかりの緊張のようなものを感じながら、僕は彼女と話す。そうすることが当然に思える。
「そうか……。ならばこの縁、大切にさせてもらおうか。雪浩よ、儂の話を聞いてくれるか?」
「ええ、もちろん。結さんがそうしたいのでしたら」
「はは、そうじゃった。波長が合うとはこうも心地がいいものじゃった」
彼女は声をあげて笑った。その声は少しくらい二階の父にも届きそうな大きさだったけれど、間違いなく聞こえていないと僕には分かった。
「まずは、儂のことを話そう。お主が分かっているのも名前と妖怪と言うことだけのようじゃしな。
雪浩よ。これが何だか分かるか?」
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