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その日、Fは体調がすぐれず、部屋のベッドでずっと寝ていました。休めばよくなる……そう思って横になっていたのですが、手足を動かすのもままならず、体調はますます悪くなる一方。
ところが、お昼を過ぎた頃でしょうか。いきなり彼女の携帯が鳴り、しんどいなぁと思いながらも受話したのです。
『F、今空いてる?』
「空いてるけど、めっちゃしんどい……」
『…………』
相手は、Fの彼氏さんでした。彼女の不調を聞いた彼は、通話口の向こうで急に押し黙ってしまい、
『――F、出掛けよう! すぐそっち行くから』
繰り返しそう言います。彼女が自分は今、体調がよくないから休みたい事を再度告げると「いいから、出掛けるぞ」と押し切られてしまいました。
結局、Fは重たい体を引き摺るように家を出たのです。
車に揺られる事、小一時間。暫くすると、ついさっきまで動くのもやっとだった体がいつの間にか軽くなっていました。
「体、だいぶましになったろ?」
彼の言葉に頷いたFは、その時初めて彼が自分を家の外に連れ出した理由を知ったのです。
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