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・・・─────懐かしい、夢を、見た
顔はもう思い出せないけど、香水臭くて派手な……蔑んだ目で俺を見下ろす母親の、夢
それから……
それから───────・・・・・
「─き──たか───隆樹、起きて」
「……ん。雅……?」
「うん。僕はココに居るよ」
身体を揺すぶられて起きると、凄く優しい顔で俺を見下ろす雅の姿が目の前にあった
ぐっすり寝ていたせいか、熱は下がっていて身体も軽くなっている
「あー・・・俺、寝過ぎた?」
「ううん。ほら、帰ろうか」
「おー」
まだ少しボゥっとする頭を掻きながら外を見ると辺り一面真っ暗で生徒らの声すらなかった
鞄はどうやら雅が持って来てくれたらしく、俺は伸びをしてベッドから離れる
立ち上がっていざ保健室から出ようとした時、扉を半開きにしてピタリと動きを止めた雅が振り返ってくる
「なに、帰らないの?」
「…帰るよ。でも、ちょっと充電」
「っちょ!?」
そう言って雅は俺を自分の中に引き寄せるといつもよりキツめのハグをしてきた
身長差からか、雅の顔は俺の肩にコトンと乗っかる
いつもの甘える仕草とは違う雅に俺は少しだけ焦った
「雅…?どうしたんだよ」
「───大丈夫だから」
「はっ?」
「僕が、ずっとずっと一緒に居るよ。ちゃんと隆樹の側に居るから」
「─────っ」
「捨てないし、離れない」
甘く優しいその言葉とは裏腹に、雅の腕は強く俺を抱き締めていた
俺は、何を言ってんだと思った
それを言おうとしたけど…どうしてだか、喉に何かが引っかかって声が出せない
出したら、きっと涙が零れただけじゃすまない
そこで気付いた
あぁ、雅は俺の”充電“をしているんだと
コイツは俺の事になると鋭いからなんでも欲しい言葉をくれる
普段は変態でウザイのに、な
俺達は暫くの間、そうしていると雅から俺を解放してニッコリと笑った
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