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『──断る』
俺の意外な言葉でソイツの顔は不思議そうな表情へと変わった
『へっ?なんでや、バラされてしもうてええんか?』
『どうせハッタリだ。それに、ダチになりたいって言う奴が脅してくんのはどう考えても可笑しいだろ』
『いやいや、ハッタリやのーてやな…てか、さっき認めたやん!?』
『知らね。忘れた』
『え、えぇー・・・;;』
『ダチが欲しいなら他当たれ』
この行動で本当にバラされる可能性はあったが、冷静に考えて証拠らしい証拠をコイツが持っているとも限らない
それに、あんなに暗かったんだ
写真を撮っていたとしても真っ暗で俺と雅だという証拠にはならない
教師か生徒すら分からないだろう
危うく自分で墓穴を掘る所だった事に気付いて俺は早くコイツから離れようとした
『ま、待てや!頼むからダチになろーや、な!?』
…が、腕を掴まれてコイツに捕まった
切羽詰まったように慌ててうろたえるソイツに俺は言葉が詰まった
『秘密は誰にも言わんから!な?な?』
『…意味分かんねー。さっきまでの勢いはどこいったんだよお前』
『お前が言うたんやろ!偽っても誰もみぃひんて…。せやから、ホンマのオレ自身を見つけてくれた月城と仲よーなりたいんやっ』
コイツのこの瞳を見て、俺はある確信をする
”面倒くさい奴に捕まった“と
はじめて見た相手を親にする雛鳥のような感覚でソイツは俺に執着するだろう
そんな瞳をしていた
何かを諦めたように俺は溜め息混じりに勝手にしれと言うと、ソイツが花を咲かせたようにパァッと明るくなって最初に見たあの偽りじゃない笑顔で言う
『オレ、柑棟 珱斗やゆーねん。宜しくやっ』
太陽みたいに眩しいソイツの笑い方は、正直言って嫌いじゃなかった
偽物よりマシという意味で
けれど、同時に思うのは…俺とは正反対で少し居心地が悪いなという事だった
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