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3歳の七五三の写真見てくれよ。神社の鳥居の前で笑ってるけど、鳥居がちょっと曲がってるだろう。さらには、石畳の階段もあちこちで石が転がっている。娘のテンションが上がって、石畳の石がどんどん吹っ飛んでいったんだ。絵馬とかもバラバラに飛んでいく。この写真の右隅に落っこちている大量の木くずのようなものが絵馬だ。もう大変だよね。
で、このやばい現象をどうにかして「たまたま風が吹いた」「たまたま地震が起きた」みたいな自然現象に見せかけないといけない。もし、娘の感情のゆれで混乱が起きていることを気付かれたら、娘は差別されてしまうからね。だから、私は「娘正常生活班」を組んだよ。お手伝いさん、ボディーガードのチームで、娘が起こした混乱をもとに戻していくんだ。
ほら、こっちの絵馬を片付けている黒人とのハーフの青年の写真!この青年は娘とも一緒に笑顔で写真撮ってるのもあるよね。彼がジョンだ。ジョンは、娘の感情の起伏を予想して次にどんな自然現象が起こるかある程度予想して、対策を瞬時に練るんだ。この時も絵馬を10分で元に戻して、石畳の石も30分でほぼ元通りにしたからね!うちの財閥のスタッフの優秀さをなめてもらっちゃ困る!
娘が通った後は嵐が去ったような感じになる…が!すぐさま、ジョンとそのチームが元通りに直していく!このチームプレイのすごさよ!これで娘の生活は安全!周囲にも極力迷惑をかけない!そう思ってたんだ、私は。
でもね、そんなにうまくはいかない。私は仕事が忙しくてどうしても娘といる時間は妻のほうが長くなる。そうなるとどうなるか。妻は疲れ果ててしまったんだ。娘が泣くたびに何かが割れる、壊れる。外に出れば娘の感情の浮き沈みで振り回される。いかにお手伝いさん達がいようとも、いかにジョンが頑張ろうとも、平穏に暮らしたい妻にとって、波乱を起こし続ける娘の世話はつらいものがあったんだ。また、私が楽しく娘の写真を撮りまくっていたのも気に食わなかったんだろう。お前は写真撮ってるだけだろうと思われていたんだろうな。今となっては分かるよ。
このアルバムにはほとんど母親の写真がないだろう?妻は娘が小学校に入る頃に出ていってしまった。
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