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 ZONYが忽然と姿を消してから、二か月。突然、新聞のラテ欄に彼の名前が大々的に打たれた緊急特番が組まれた。世間の関心はまた新しいゴシップに移りつつあったが、彼にプライドをへし折られたメディアたちは、このまま彼が風化されることを許してはいなかった。  視聴率よりも、殆ど復讐に近い執念によって編成された番組であったが、半ば強引にZONY断ちを余儀なくされていたかつての動画の視聴者たちは、彼の名前に飛びついた。なんだかんだ言っても、ZONYのことが気になって仕方なかったのである。 「いったいZONYの口から、先の事件をはじめ、彼によって迷惑を蒙ったあまたのタレント、そして国民に対して、謝罪の言葉が発せられることはあるのでしょうか、いや、発せられなければなりません。……どうやら、彼はここに潜伏していたようです」  リポーターたちは、カラスによって荒らされた半透明のビニール袋が散乱するけもの道を進み、ペンキの塗装が殆ど赤錆によって剥がされたあばら家に辿り着いた。  テレビの番組に便乗して、雑誌記者やフリーのカメラマン、そして、ZONYよろしく場所を特定して動画を配信しようと画策する野次馬たちまで現れ、人気のないあばら家の周りには不自然なまでの団体がいつの間にか形成されていた。
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