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同僚の冷ややかな目線に堪えながら大通りへと向かった。
「お願いしまーす! お願いしまーす!」
街を歩く人々はビラなど簡単には受け取ってくれない。
それくらいならまだ良いほうで、手を払われたり、わざとぶつかられる事もしばしばだ。
ーー人はなんのために生まれて来るんだろう。
そんな自問を繰り返しながら、終わりの無い業務に就いていた。
「よーし、今日は裏手の森をボーケンするぞー!」
「タイちゃん早いって、待ってよー!」
近所の小学生だろうか。
あっちのタイちゃんは楽しそうだ。
こっちのタイちゃんはというと、人生の荒波に揉まれている所だ。
暗黒組織の末端として。
そして近々、その肩書きすら喪いそうである。
ーーもういいんじゃないか?
心の声だ。
いいんじゃないって何がだろう。
ーーそんな真面目にやらんでも、もうおしまいなんだから好きにやれよ。
おしまいって、オレの人生の事か。
だからいっそ好きにしろって?
そんな勝手なことが、社会人に許されるはずが……。
ーー許す。
許されたぞオラァー!
ふざっけんなクソどもがぁー!
やってられっか、くたばれ!
オレは翼が生えたような猛ダッシュでデスクに戻り、バッグだけとって逃げた。
フロア中がザワついてたみたいだが知らん。
なんせオレはもう戻らないからな。
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