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いきなり、ほくそ笑む私に直也は一瞬、怖気ついた。
それでも欲求の方が勝ってるのか、すぐに我を取り戻し、キスしようと近づいた。
ところが……
――ぎゅるるるるるぅぅぅっ!!
どこからか妙な音が鳴り響いた。
しかしその正体は直也のお腹の中からだった。
「な、なんだ?は、腹が……腹がい、痛いっ……!!」
直也は私から離れ、両手でお腹を抱えながら、後ずさりした。
「フフフフッ………フフフフハハハハハハハハッ!!」
私は直也のお腹を抱える姿に笑いを耐えかねずに、笑ってしまった。
「お、お前……な、何をした?」
「別に……」
私はわざと知らない振りをしてみせた。
実際は紅茶を出す前に『腹痛魔法』を掛けた。
お腹が痛くなる、初歩的な魔法だ。
「トイレなら奥よ。でもドアが壊れてて開かないのよ。向かいのラーメン屋さんなら大丈夫かも」
直也の無様な姿にすっかりと私は勝ち誇っていた。
その証拠に終始、直也を見下すように笑っていた。
「ちっ!……くぅぅっそぉぉ、覚えとけよっ!!」
直也は苦し紛れに声を出しながら、ゆっくりとお店を後にした。
でも直也にとっての災難はここから始まった。
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