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「後世の私へ……っと」
封筒に宛名を書き終えた私は手紙を二つ折りにして、それを封筒にしまった。
私は最後の仕上げとして、封蝋で封筒のふたを閉じた。
赤い蝋を垂らし、そこにシーリングスタンプを押した。
我が一族の紋章“赤き竜”を……
そんな中、書斎から急に何者かが突然、入ってきた。
後ろを振り向くと、それは弟子のマリアンヌだった。
ノックもしない無作法な弟子を叱ろうとしたが、先に声を発したのはマリアンヌだった。
「師匠っ!警官隊がっ!」
マリアンヌの血相変えた表情に叱る気も失せ、私は顔を机の上に戻した。
「早いな……」
「ど、どうしましょう……」
この家にやってくる警官隊に怯えているマリアンヌに私は落ち着かせながら、先ほどの手紙を本の最後に挟んだ。
「マリィ。最早、魔法の時代は終わろうとしている。今更、うろたえたところで何にも変わりはしないわ」
「師匠……」
マリアンヌはこらえていた涙を抑えきれずにとうとう泣き出した。
「泣くのはおよしよマリィ。これは終わりじゃない。始まりなんだから」
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