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一体全体、どうなってるのか分からなかった。
だが、俺の目に写っていたのは目が見えて、喜んでいた拓磨の姿だった。
(起きていたのね。ったく、面倒くさいな)
恭華さんは愚痴をこぼしながらも、尻尾の先端を鈍器代わりにして後ろに忍び寄った。
そして、喜びのあまり全く気付いてない奴の頭を強く殴り、拓磨は再び気絶した。
(幸臣。始めましょ)
恭華さんはそう言った瞬間、気絶した筈の拓磨がまたもや起き上がり始めた。
ところが今度は様子が違っていた。
先程の喜びで舞い上がる様子はなく、至って冷静な表情で辺りを見渡した。
そして、俺達を見つけるとこちらへ向かって走り出した。
俺は警戒して前に出ようとしたが、その前に拓磨が喋った。
「待て、俺だ。三上だ」
「えっ?」
「今、俺の身体は血が足りなく、自由に動けない。だから、拓磨の意識を乗っ取って身体を借りてる。しかし、2回目とはいえ、こいつの身体はクズの臭いがして気分が悪いな」
「2回目?」
「1度目は外でエルフィナに刺された時だ。こいつは失明しているからすぐにバレる恐れがあった。だから意識を乗っ取って目を開かせる必要があった。とはいえ、初めての魔法だからな。成功するかヒヤヒヤしたわ」
三上さんは軽く笑うと、気合いを入れ直す為に頬を強く叩いた。
「よしっ!では最後の戦いへと参ろうか」
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