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三上さんの作戦に俺は少なからずの疑問を持った。
確かにこの作戦で凛星を連れ戻す事ができることは理解できた。
だが、他に方法がなかったのか……
魔法使いが4人もいながら、反論する者が1人もいなかったのか……
そんな事が頭を掻きむしり、俺はいてもたってもいられず、気が付けば三上さんにこの疑問をぶつけていた。
「そ、それでいいのですか?」
「………なんだと?」
三上さんは語気を強くして言ってきた。
「ひ、人1人の生涯を捨てるようなもんですよ。そ、それでいいんですか?」
膝をガクガクと震えながらも、俺は愛する人の師匠に向かって反論した。
すると三上さんは無言で、俺の方へと早歩きで駆け付けた。
――やばいっ!言い過ぎたっ!!
俺の震えは頂点に達した。
三上さんが怖くて目を瞑った。
ところが、彼は意外にも肩を優しく掴むのみで終わった。
不思議と思った俺は恐る恐る目を開き、三上さんの方を向いた。
「お前は優しい男だな」
「えっ?」
意外な事を口にする魔法使いに俺は少しだけ、困惑した。
「お前の言う通りだ。弟子1人を救う為に人1人の人生を犠牲にしてしまう。だが、こいつはそれ相応の事をしてしまったんだ。自首すると言い張ってたがそんなの嘘に決まってる。謝るなんて論外だ。許したらまた女を漁る。真に許しを得たかったら……」
三上さんは肩をギュッと握りしめた。
「人生を捨てろっ!!」
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