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師匠はそんな私にため息をつきながらも、優しく話しかけた。
「あのな凛星。楽しいのは痛い程、分かる。かつての俺もそうだった。もっと魔法を極めたいと仕事をサボった時期もあった。しかし、焦りは禁物だ。寝るのも勉強の内なんだぞ」
「分かってますよ」
「その顔は分かってないな……それに大学の勉強はどうした?」
「も、勿論、やってますよ」
実はやっていない。
ここ数日は魔法の勉強にほとんどを費やしていたからだ。
勿論、師匠には全てお見通しだった。
「嘘つくな……だが、これは深刻な問題だな……よしっ!」
師匠は何かを閃いたのか、デスクから立ち上がった。
「行くぞ。課外授業だ」
「どこに行くんです?」
「サンシャイン国立医療センターだ」
「ちょっと、そこって……」
「そう。花木が入院している病院だ」
師匠は私に向かって、手を伸ばした。
「『移動魔法』は初めてだな?」
「はい」
「大丈夫だ。俺の手を握っていればすぐに終わる」
師匠は自信を持って言った。
私は恐る恐る、師匠の手を握った。
すると足下から徐々に消えていった。
若干、怖くなったが師匠を信じようと、必死で彼の手を強く握りしめた。
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