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サンシャイン国立医療センターを出た後、私は再び師匠の手を握った。
次に師匠が連れてってくれたのはトワイライト・ビルの屋上だった。
外の景色は既に淡い夕焼け色に染まっていた。
その色がとても綺麗で、私はその景色に魅了された。
私は夕焼けの景色がこんなにも美しいものだと、初めて知った。
「綺麗……」
私の目に一粒の涙が零れ落ちた。
涙を拭う中、私はどうして涙が流れたのか考えた。
あまりの夕焼けの美しさに感動したのか、それともこれまでの大学生活に恥じてしまったのか……
今の私にはそれが分からなかった。
だけど、一つ確かな事がある。
隣にいた魔法使いがいなければ、私はこんな景色を拝むことはなかった。
すると、その魔法使いが声をかけてきた。
「見事だろ?恐らく、魔法使いにしかこの景色を味わえる事ができないだろう」
「そうですね……」
私はそう言いながら、師匠の顔を見た。
とても穏やかで、優しかった。
でも……何かおかしかった。
いつも見ている師匠の顔なのに、その顔を見ただけでホッとした。
私は何だかそれが怖くて、すぐに夕焼けの方へと顔を戻した。
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