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私は師匠の顔を見ないように、今日のお礼を言った。
「今日はありがとうございます」
「気にするな。だが、一番良いのはベッドで寝ることだからな」
「分かってます……でも、いつも私は師匠に頼りっきりで、ちょっと申し訳ないないなぁ」
私は師匠に感謝しつつも、その分、申し訳なさがいっぱいになっていた。
魔法を教えてくれた他に、私をヤリサーから抜け出させてくれたのも師匠のお陰だし。
それにお父さんの念願だったお店を開く夢に、資金提供してくれたのも師匠のお陰だった。
私は師匠に返しきれない恩がある。
しかし、当の師匠はそんな事は気にしてない様子だった。
「いいんだ。お前に魔法を教えるにはサークルのクズ共は邪魔だったし、お父さんの料理は本当に美味しい。あの腕なら、ライバル店でも張り合える事ができるだろう。そうなればこの街はまた潤う。結構な事じゃないか」
「この街?」
「俺はこの街が好きだ。“夕焼けが最も美しく見える街”……だが、昔は犯罪や汚物が目立った住みにくい街だった。この街の支店長に赴任した時、俺はこの街の発展だけに力を注いだ。銀行員として住みやすく、美しい街にしようと決心したんだ。長い道のりだったが、漸く、ここまできた」
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