第2話 集中力と根気と一粒の憎しみ

36/41
前へ
/790ページ
次へ
師匠は沈みゆく夕日を見つめながら、夕凪市の事を語ってくれた。 私はそれを聞いてるうちに、笑みがこぼれた。 師匠がこの街を熱く語る様はとても、清々しいものが感じたからだ。 この人は本気でこの街を思ってくれている。 住民の幸せを本気で考えてくれているんだ。 そう思った矢先、今度は胸の高鳴りが熱くなった。 心臓の鼓動が鳴り響き、師匠の顔を直視できないようになった。 「どうした?」 「えっ?」 私が顔を背けてばっかりいたのか、師匠が心配して声をかけてきた。 「な、何でもないです……もう、中に入りましょう」 既に夕日は沈み、星が光を見せ始めた。 しかし、夜風が当たって寒くなってきた。 それなのに、私の身体は不思議と寒くなかった。 むしろ、暑すぎた。 「……そうだな」 師匠は『移動魔法』の為、私に手を伸ばした。 私は彼の顔を見ないようにしながら、ゆっくりと手を握った。
/790ページ

最初のコメントを投稿しよう!

342人が本棚に入れています
本棚に追加