第2話 集中力と根気と一粒の憎しみ

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~闇色の魔女~ 凛星を帰らせた後、俺は家に帰った。 俺の家は50階建ての高層マンションに住んでいる。 2LDKで一人暮らしには勿体ない広さだ。 しかし、最近は仕事と弟子の面倒で家に帰れない日々が続いた。 久しぶりに帰る我が家だが、寛いでる(いとま)は俺にはなかった。 今夜中に目を通さなければならない書類があるからだ。 でも、その前にエリックのご飯だ。 「おーい、エリック。ご飯だぞぉ」 俺はキャットフードの入った器を手にしながら、部屋に居るはずのエリックを呼んだ。 すると、俺の呼びかけに一匹の白猫が、ひょこっと現れた。 「ほら、いっぱい食べろよ」 器を床下に置くと、その白猫は美味しそうに食べ始めた。 勿論、白猫の正体は豹から元に戻ったエリックだ。 「美味いか?」 「ニャァン」 「そうかそうか。それは良かった」 俺はそう言いながら、エリックの頭を撫でた。 ――可愛いなぁ…… 仕事で疲れた時、辛い時、この笑顔に何度も救われた。 普段は豹の姿でいるが、俺と凛星の前では元の白猫の姿で俺達を癒してくれていた。 いや……もう1人いたんだ。
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