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アイネが立ち直ってからペースを上げて歩いたが、森の中は真っ暗になってしまった。
暑い季節にも関わらず、何故か今は快適な温度に感じる。
昨日の布一枚でも暑かった筈だが、今日は気温が低いのかなと思ったが、暑さで兎がぐでっとしている。
「アイネさん、暑くないのはこの服のお陰ですか?」
服の裾をつまんで広げると、振り返ったアイネは両手で大切に持っていた花を、急いで後ろに隠す。
「そうじゃな、ドラゴンの鱗には纏った者を常に快適な状態に保つ。その上丈夫で加工も簡単でとにかく万能だ、流石我々だな。おぬしらみたいな劣等種とは大違いだ」
「あー、そんな事言う人は嫌いです。私たちだって頑張ってるんですからね」
「いくら頑張ったところでドラゴンには叶わないだろ、飛べもしなければ火も出せない。唯繁殖力が強いだけではないか」
「それしか能が無いみたいに言わないで下さい。ドラゴンなんて大きくて邪魔じゃないですか」
「人の姿にだってなれる。おぬしらはドラゴンの姿にはなれぬであろう、同じ土俵に立ててすらないではないか」
勝ち誇ったように腕を組むアイネの翼を指で撫でて、再び空中に一瞬で連れていかれる。
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