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胸に手を当てて呼吸を整えていたアイネは、私の両脇に手を入れて、顔と顔を向かい合わせる。
私は目を合わせずに左上に視線を逸らすと、空で閃光が煌めいて、何か物体が落下する。
「アイネさん」
「分かっておる」
「なら早く行って下さいよ」
「むっ……んん、あい分かった。しっかりと捕まっておれ」
回転して前方にぶん投げられた後、ドラゴンに姿を変えたアイネの牙にしがみつく。
「ま、まいあいあうか?」
「間に合わなければおぬしは怒るであろう、おぬしを落としてしまったら確実に間に合わなくなる」
一応手で覆って風を防いではくれているが、遠心力で体が置いていかれそうになる。
「降下するぞ」
「無理です!」
一瞬真上にふわりと上がった後、次は回転して急降下を開始する。
左手を伸ばしたアイネは、追い付いた物体と地面の間に手を滑り込ませて、地面を削り取りながら衝撃を吸収する。
手を離してアイネの口の中に入った私は、ザラザラとした舌の上に座り込む。
アイネが上を向いて安堵の息を吐いた折に、口の中の私は喉の奥に転げ落ちて、胃の中に収まる。
「どうじゃクライネよ、我は無事にこの女子を助け出したぞ。劣等種を助ける為にこれ程苦労せねばならんとはな……クライネよ、落としてしまったか」
「居ますよアイネさーん! お腹の中です」
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