愚かな種族

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角から手を離すと、案外近い場所に地面があり、すんなり下りる事が出来た。 いつの間にかジャンヌに手懐けられているアイネは、謝ったからもう良いだろと言っている子どもみたいな態度をとる。 「有難う御座いますアイネさん、貴方たちに出会えたのはやはり神の啓示だったのですね」 「おぬしは聖女なのか、神とは一戦やらかして痛い目を見た。神の加護を受けた聖女となれば私は恐ろしくてな……」 十字架を手に持ったジャンヌが一歩近付くと、アイネはそれに合わせて一歩ずつ後ずさる。 再び騎士の列が街の中に入って来るが、街の人の様子が先程のとは明らかに違う。 荷台に横たわっていたのは戦死した騎士で、恐らくこの街から徴兵された男たちなのだろう、膝から崩れ落ちて泣く女性、若い兄の死を嘆く弟と妹、皆戦争による被害者であり、同時に戦争に加担した加害者でもある。 祈るジャンヌの隣で、アイネは荷台の人を見て不服そうな顔をする。 「これがおぬしらの種族だクライネ、これでも愚かだとは言えんのか。本来なら同族は同族を食うように出来ていない、だがこれを見てどうだ、寄越せと奪い合い最後にはどちらも疲弊し切る」 「確かに愚かなのかもしれませんね、いや、分かっていたんだと思います私は。よし、また夢が増えました」     
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