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「馬鹿言わないで下さい、居場所も無かった場所が恋しくなりますか?」
「思わぬな、清々する」
「それがなってしまったんです」
爪とナイフを置いたアイネは、立ち上がってドアノブに手をかけて振り返り、「こっちゃ来い」と言って部屋を出ていく。
部屋から出るとアイネの姿は既に無く、乏しい光に照らされた廊下が伸びる。
階段を下りて宿の外に出ると、腰を何かに掴まれて宙に浮く。
「誰で……」
口を押さえられて声が出なった後、空高く投げられて尻餅をつく。
「驚かせたなクライネ」
「街の真上でドラゴンになったら、大騒ぎになりますよ」
「心配せずとも良い、認知する事も不可能だ。そんな事より上を見てみろ、夜空が綺麗じゃぞ」
「本当ですね。アイネさんの背中も案外居心地が良いですし、良い夜ですね」
暫く飛行を続けると、丘の上に降り立つ。
ふたつの足で立ったアイネは空を見上げて、人の姿に形を変える。
大きく翼を広げたアイネは尻尾を振って空に手を伸ばすが、ふらふらしていて定まらない。
「おぬしは本当に戦争を無くす気なのか」
「私の夢にそれも加わりましたからね、本当に無くしたいです」
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