悲しみを隠す花

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悲しみを隠す花

怪しかった雲も無くなって、街では祭りが催されていた。 忘華祭(ぼうかさい)と言う祭りで、朝に戦争で失われた命を迎え入れ、夜にまた送り出す祭りだそうだ。 昨日まで無かった露店や出店が街には並び、祭りの熱気に当てられた子どもがはしゃぎ回っている。 活気の無かった人の顔は笑顔だったり安らかなものだったり、祭りなのに泣いている人まで居る。 ジャンヌを引っ張って出て行ったアリスを目で追いかけていると、街の入口で外から帰って来たアイネとなにやら会話を始めて、何かを受け取ってから飛び跳ね、またジャンヌを引っ張って走って行く。 窓枠に肘を付いてアイネを追っていると、私に気付いて手招きをする。 宿から出てアイネの下に行くと、気味の悪いお面と真っ黒なローブを渡される。 「街の中心にある広場の台に火が灯された時に、このふたつを身に着ける。意味としては全て魂と平等になり、一緒に楽しむ為だそうだ。これを着たら私たちも魂と言う事だ」 「気が付いたらアイネさんが居ないとか、私は嫌ですよ」 「何を言うておる。私は生命として君臨しておる、おぬしに心配される程衰えてはおらぬよ」     
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