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口も動かしていないのに聞こえる声に、私は人が居るのではないかと探してしまう。
「貴様はいつもそんな服で居るのか」
「そうです。ごめんなさい、もっと綺麗な服があれば良かったんですけど」
「全くだな」
「ですよね、あはは……」
もう死ぬんだと思うと、最後までこんな服しか着れない自分が情けなくなって、涙が瞳を飛び出す。
ドラゴンはそんな私に構わず大きな手を伸ばして、体を掴み上げる。
手を掴まれたかと思うと、鉄の手枷がバキッと音を立てて壊れる。
「何のつもりですか、私は生贄になる為に来たんですよ」
「年頃の女子に傷を付けるなど、大きな痣も。痩せ細っているではないか、そんな生贄を喰うても満たされん」
私を手に乗せたまま湖に入ったドラゴンは、口の中に湖の水を溜める。
「この湖はおぬしには大き過ぎる、遠慮せずに体を清めろ」
「生贄に対して優しいのですね」
「なに、おぬしは昔遊んだ女子に瓜二つでな、その子は肌と髪がおぬしみたいに綺麗な白色でな。透き通っておる肌に優しい声、私が見せたドレスを喜んで見ておったのも可愛らしくてな」
「そうなんですか、その子なら私だってお友だちになれたのでしょうか。あ、失礼します」
服をドラゴンの手の上に畳んで、口元に近付けてくれた手から飛び移って、口の中の水に入る。
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