めんどうなやつ

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めんどうなやつ

遊び疲れた私は湖面を漂って、すっかり暗くなった空を見上げる。 空に光る十字星が私を照らして、水際に体を横たわらせているアイネの視線を惹き付ける。 翼を小刻みに揺らすアイネは、湖面を見て満足そうに瞼を閉じた。 私が一瞬目を離した隙に、ドラゴンの代わりに髪の長い女性が立っていた。 湖を漂っていた私の手を引っ張った女性は、とても整った顔立ちをしていて、左の目元にある黒子が印象的だった。 「お腹が空いただろうクライネ、共に街に行くぞ」 「そのおっさん臭い喋り方はアイネさんですか、残念な美人なんですね」 「残念だが私は男だ。こんな見てくれをしているがな、証拠に胸は無い」 「それ私に言いますか、隣に並んでも大差無いくらいですから私」 私が小さい所為もあるのか、頭に手を置かれてわしわしと撫で回されて、これからだと励まされる。 よく食べて寝てストレスが無ければ大きくなるとアイネは言うが、既に十四年も生きて来た私の身長は百五十四しかない。 それに対して、アイネは百七十八くらいありそうだ。 「何が食べたい」 「贅沢は言いません、美味しいものが食べたいです」 「ドラゴンの肉は……」 「遠慮しておきます」     
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