めんどうなやつ

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そうかと言ってまた唸り始めたアイネは、再び拗ねたようにそっぽを向いて、歩く速度を早くする。 「もう勝手にしろ」 そう言って翼を広げたアイネは、飛翔してどんどん小さくなって行く。 じじい臭い喋り方をしているのに、子どものようによく拗ねる。 悠久の時を生きるドラゴンなのに、子どもっぽい人だ。 森の中に重い足音が響き、木の陰で大きな影が動く。 「うそ……この森に餓狼が居るなんて……」 主に山に出没する餓狼は、この森に何故か存在していなかったが、目の前の木の陰から確実に私を狙っている。 怪しく光る眼光は私の足を地面に縫い付け、怯え切った体から言葉さえ平気に奪う。 飛び出た餓狼は私と急速に距離を詰め、鍛え抜かれた脚で飛び掛かる。 私の目の前に迫った時、空から落下して来たアイネは餓狼の隣に着地して、手に持っていた大量の花を私に差し出す。 「この花綺麗じゃぞ、のう犬っころ」 「この花よく見ますよ」 「なっ……私は見たことがなかったんだ」 「守護者なのに?」 「なのにだ。素直に喜べ馬鹿者が、おぬしのように白くて綺麗じゃろ?」 「私よりも遥かに綺麗です、どちらかと言えば髪も肌も白いアイネさんの方じゃないですか?」 アイネに首根っこを掴まれている餓狼はすっかり大人しくなり、体に花を飾られてオブジェと化している。     
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