めんどうなやつ

3/4

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
手に持っていた花が無くなったアイネは餓狼を解放して、翼をぐったりとさせる。 明らかにへこんでいるアイネの顔を見上げると、死んだ魚よりも酷い目をしている。 荒んだ瞳の前に餓狼が落としていった花を見せて、自分の髪に着ける。 「良いでしょ、この綺麗な花」 「そうじゃな、流石私だ」 機嫌を直して歩き出したアイネは、背の翼を小刻みに揺らして嬉しさが隠せていないでいる。 尻尾を振る餓狼と同じ感覚なのだろうかと思い、翼を掴んでみると、びくんと跳ね上がって膝から座り込んでしまった。 「これ、やめぬか。ドラゴンの翼には神経が沢山通っておってな、猫の肉球と同じ位敏感だと覚えておけ」 「はーい。ほら立ってください」 冗談半分で指先で撫でると、腰に手を回されて一瞬で空高く舞い上がる。 「そんな事をするやつは、体で分からせねばならんようだな」 「おーっ! あれがアイネさんの泉であっちには私の村が有ります、ぎりぎり副都の壁も見えます!」 「あ、あぁそうだな……」 「分からせるってこれですか? 高い所は嫌いじゃないですよ」 「いや、もう良い。そんな嬉しそうな顔をされたら、ここから落とそうとした私が悪人みたいになるではないか」 「えー、落とそうとしてたんですか? 鬼、人で無し、阿呆ドラゴン」     
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加