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手に持っていた花が無くなったアイネは餓狼を解放して、翼をぐったりとさせる。
明らかにへこんでいるアイネの顔を見上げると、死んだ魚よりも酷い目をしている。
荒んだ瞳の前に餓狼が落としていった花を見せて、自分の髪に着ける。
「良いでしょ、この綺麗な花」
「そうじゃな、流石私だ」
機嫌を直して歩き出したアイネは、背の翼を小刻みに揺らして嬉しさが隠せていないでいる。
尻尾を振る餓狼と同じ感覚なのだろうかと思い、翼を掴んでみると、びくんと跳ね上がって膝から座り込んでしまった。
「これ、やめぬか。ドラゴンの翼には神経が沢山通っておってな、猫の肉球と同じ位敏感だと覚えておけ」
「はーい。ほら立ってください」
冗談半分で指先で撫でると、腰に手を回されて一瞬で空高く舞い上がる。
「そんな事をするやつは、体で分からせねばならんようだな」
「おーっ! あれがアイネさんの泉であっちには私の村が有ります、ぎりぎり副都の壁も見えます!」
「あ、あぁそうだな……」
「分からせるってこれですか? 高い所は嫌いじゃないですよ」
「いや、もう良い。そんな嬉しそうな顔をされたら、ここから落とそうとした私が悪人みたいになるではないか」
「えー、落とそうとしてたんですか? 鬼、人で無し、阿呆ドラゴン」
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