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新王誕生
痩せ細って骨が浮き出た体に、コルセットが更にきつく絞められて、皆が期待する王の姿に一瞬で変わる。
これが少し前まで生贄だった私に求められた、この世界の抗えない定め。
鏡に映る自分の姿を見ていると、この世界が私に何をしろと言っているのか分からない。
夢を捨てて国を纏め上げ、己の気に食わないものを全て排除しろと言っているのか。
それとも、夢を諦めてこの世界の平和の為に尽くせと言っているのか。
もしくは、今まで受けた仕打ちに対して、運命を決めた神からの謝罪なのか。
もしかしたら、お前は生きている価値も無い、己の運命に惨めに揺さぶられながら死ねと、世界からも忌み嫌われているのか。
メイドに付き添われて部屋を出ると、エリュードが待機していた。
「お待たせしました。行きましょうエリュードさん」
「私は皆からエルと呼ばれています、どうぞ王もそうお呼び下さい」
「分かりました。戴冠式の会場に行きましょう」
「Yes My fair Lady」
胸に手を当ててお辞儀をしたエルは、私の方に手を差し出す。
差し出された手の平に自分の手を乗せると、優しく握られてリードされる。
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