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廊下を歩きながら窓の外を見ていると、何やら下で騒ぎが起こっているようだった。
エルが気にしていないのなら、そんなに対した事ではないのだろうと、顔を引き締めて綺麗な姿勢を意識して歩く。
大きな扉の前で立ち止まると、エルが扉を軽く二回叩く。
それを合図にして、扉の向こうから男性の声が張り上げられる。
「新王が到着なされました。一同起立」
「開門!」
大きな扉が向こうから空けられると、大きな広場は国民で埋め尽くされており、私の姿が見えると歓声を上げる。
今迄向けられていたとしても、怒号や中傷の言葉しか浴びなかった為、心臓がばくばくして落ち着かない。
深呼吸をして落ち着こうとしていると、握られていた手にさらに力が入って、少しキツく掴まれる。
「大丈夫です。王は必ず成し遂げられます」
エルの手を離して運ばれて来た王冠を受け取り、頭の上に乗せる。
その瞬間に一気に歓声が沸き、拍手喝采に包まれる。
「この魔道具に向かって、今後の意気込みなど、一言お願い致します」
私の手に変な物体を乗せて下がったエルは、私が見ると微笑んで小さく手を振る。
拍手や歓声が全て無くなったのは、ここに居る全員が私の言葉を待っているというふうに取れる。
覚悟を決めて深呼吸をして、魔道具に口を近付ける。
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