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「ずっと寝てたからね」  ミチルが小夜の横で茶化すようにいう。 「顔色でずいぶん印象変わるのよね……」  血行って大事よね、とミチルに語りかけながら、二人して春人の顔を凝視してくる。少しの間は耐えていたけど、五、六秒くらいじーっと二人に見られ続けていたたまれなくなった。 「……あんまりみないで」  視線を逸らして言ったら小夜が破顔する。その隣でミチルも笑っていた。  今日の小夜はよく笑う。不思議だった。 「……なんでそんなに笑顔なの?」  控えめに小夜に訊ねたらすぐに答えを返される。まるで世界の始まりからずっとある理だとでも言うような堂々とした感じだった。 「あなたが笑顔だからよ」  小夜が言い放った言葉の意味をしばらく考えていた。あんまり自分で笑っているつもりはなかった。前までの自分がどれほど沈んだ顔をしていたか想像したけれど思い起こすのは難しかった。 「さて……あなたは誰に笑顔にしてもらったのかしら……?」  春人は反射でミチルの方を見てしまう。慌てて視線を戻したけどもう遅い。小夜が軽やかに感づいて笑った。 「小夜ちゃん……いじわるだよ……!」  文句を言うように口を尖らせて小夜に言うけど、小夜は真面目に取り合ってはくれない。 「ええ、いじわるね」  彼女はあっけらかんとして言った。 「いじわるだね」  ミチルも便乗する。  なんだこの二人。絶対グルだし……二人とも大切。凄く嬉しい。今もこうやって話をできることが。小夜と仲良くできることが。つい何週間か前までは微塵も想像できなかった未来だ。  夢みたいで、幸せだった。
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