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 ずっと謝られ続けるような気がして、春人は野乃花の言葉を遮る。 「僕も悪かったし、野乃花ちゃんに言われて……気づいたこともあったから」  ぎこちない笑みしか作れなかった。  この気持ちは嘘ではない。野乃花の言葉にはっとさせられたことは本当だった。それにもう終わったことだ。後腐れなく終わらせたかった。今は今ある幸福感だけを感じていたい。過去のことはもういい。 「安形くんに言われた……私は私で、安形くんは安形くん……って」  野乃花は呟くように言った。その言葉は確かにミチルも音楽室で言っていた。 「私、それの意味が分からなかったの。初めに言われたときは振られたってことしか分からなかった。でも、安形くんに、あなたの居場所を教えて欲しいって言われた時、その時になってやっと分かった……好きって、ああいうことを言うのね……。私、自分が安形くんのことを好きなのか、好きでないのかも、よく分からなくなっちゃった。馬鹿だった……私は私なのに……私は、ずっと……ママと私を、一緒にしていたみたい」  彼女は自分を嘲笑うように笑った。とても醜い笑みで見ていられない。美しい顔立ちが余計に仇になっている。  不意にねえ、と話しかけられた。 「ねえ依田くん……あなたはあなたで、安形くんは安形くん……分かるわね?」  春人は頷いた。  言葉通りの意味なら把握できる。 「分かる」 「それなら大丈夫」  彼女は病み上がりの重病患者が笑った時のような笑みで春人に笑いかけてくれた。 「頑張って……応援してる」  なにか深い意味があるように思われた。  だから、追求はしなかったけど心に留めておくことにした。  野乃花の話は終わったようだったけれど、野乃花は春人が出ていくまで動かないでいるとでもいいたげに、頑なに座っている場所に留まっている。このまま出ていくのは簡単だった。でも彼女を置いて帰るのはちょっと違うんじゃないかとも思う。
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