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いつかそのメゾンのオートクチュールをまとうのが密かな楽しみだったりもする。こんなみすぼらしい自分がまといたいと思うのは傲慢かもしれない。
だけどベビードールで着飾った僕はなんでもできる。臆することなんてなにもない。
鏡から視線を逸らしてベッドへ向かう。
ダブルのベッドにはもう男が座っていた……微笑まれる。
初めての人だけど、どういうプレイがいいのかなんとなく分かった。ベッドに乗り上げた瞬間に、押し倒すようにして男をシーツの海に沈める。
腰にまたがりシャツ越しに胸を撫でながら、艶っぽい声で囁いた。
「楽しみだった……?」
言いながらボタンを外す。上から、一つ、二つ、三つ……四つ……五つ。
ボトムのボタンに指をかけた。
「……すごい噂だから……ちょっとした有名人でしょ、I区の『ICHIKA』……」
誰かが呼び始めて、今ではそれが名前みたいになった。その名前は嫌いじゃない。ICHIKAのベビードールを着ているからICHIKA……僕にはもったいなさ過ぎる名前だ。少し辟易してしまう。
でも、そう呼ばれることで誓ったこともある。
ICHIKAの名前に恥じないように、と。
「I区を裏で仕切ってるらしい芒って人が囲ってるっていうから、手が届かないかと思ったんだけど」
「ベッドの上で他人の話はやめましょう……?」
恭しく男の唇を左の人差し指で抑えた。そのまま流れるように男の首に腕を絡めて、近づけた唇で男の眼鏡を奪う。
「でも……期待してくれてたってことですよね」
嬉しい、と掠れた声で言って男の性器に直で触れた。取り出した男のものは片手では到底奉仕できそうもない大きさで思わず息を呑む。これじゃあ相手は苦労するだろうなと感じた。
「すご、い、おっき、い……」
「口でして」
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