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「かゆくなったりしてない?」
「はい。……へいき、です」
「じゃあ大丈夫なのかな……。いやごめん、おれはつよつよだからあんまりわかってはないんだ」
肌が弱いとプールや海に入れない人がいるのは知っていたが正直あんまり分かってないから聞き返されると答えに窮するとのことだった。
なるほど……。
「平気そうなら、もうすこし奥行ってみる?」
「へ、あ? おく?」
む、むりむりむり。波って奥に行くほど強いっていった。
初心者。
俺は、初心者だから!
「あ、じゃあ浮き輪でもいる? 浮き輪から手を離しさえしなければ沈まないよ?」
「うきわ」
「……浮き輪はわかるよね?」
「わ、わかりますよ!」
流石に国語か道徳の教科書にイラストが乗っていた記憶はある!
……実物は見たことないけど。
「膨らますから待ってて」
怖い感じは消えて、いつも通りの如月くん。
彼は月岡くんの持ち物らしい浮き輪を一言かけて借りて息を入れていた。
……あれが浮き輪だったんだ。しなしなだったから何かと。
確かに膨らんでいくと教科書に出てくる見覚えのある形だった。
「はふー。普通の海水浴場とかなら空気入れあるんだけどね?」
暇だったので砂と戯れていたら終わったらしく膨らんだ浮き輪を片手にニコニコ笑う如月くんがそこに立っていた。
今度置いてもらおうか、とか言ってたので利用者がいないならなくてもいいんじゃないかと返しておいた。
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