第0章「きらい、きらい。」

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あの女の口癖は、 「お前らなんか誰も助けない。躾だと言ったらそれまで」 「誰かに言いつけたら紗良がどうなるか分かるでしょう?」。 母からの虐待は年を追うごとに悪化した。 妹を守るのに精一杯で、いつもぼろぼろで学校でも貧乏人と馬鹿にされて虐められて。 妹だけが生きがいだった。 妹にも重いと言われるぐらいだったから、とにかく表面だけでもと取り繕ったけれど。 父と母の離婚理由は性格の不一致。 教育方針ですれ違ったらしい。 俺が5歳、妹が2歳の時だった。学年的には二つ違いで、年齢差は誕生日の問題である。幼さゆえに親権は母に取られ地獄を見た、というわけだ。 たまの面会も、虐待がひどくなるごとに減っていった。 母は父が見捨てたのだ、新しい女がなどといった。 女は気に入らなければ直ぐに手をあげるし、男は男で直ぐに忘れて。 みんな、きらいだ。
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