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さらに加えれば、後頭部の痛みがもしかしたら肩の凝りからくるのではないかと考え、
私はピップエレキバンを二つ、首筋に貼っていた。
あたかも二つ並んだ磁石付きパッチが、喉を噛まれた牙の痕ででもあるかのように。
また、私は病床に伏せる間、『ドラキュラ』で伯爵の城に囚われた主人公ジョナサン・ハーカーや、伯爵に狙われ、日に日に血液を失っていくルーシー・ウェステンラのように、夜が来るのがたいへん恐ろしかった。
夜行性ではない人間という動物の性か、日が沈むと、まるで体内にいる魔物が目を覚ますかの如く、昼間は下がっていた熱が再び上がり、症状が悪化してしまうからである。
そうして寒気と頭痛に朦朧とする意識の中で、私は血液ではなく、精気を奪われ続けた。
あと、診察料や検査費、薬代等で財布よりお金も――。
発病してより二週間あまりの後。
ようやく抗生剤が効き始めたのか、それとも白血球が自力で撃ち勝ったのか、なんとか動けるまでに私は回復した。
動けるようになったので、汗と病原体をしっかり吸い込んでしまった布団一式を、ファブリーズして二階の窓辺に干してみる。
窓を開け、外の風に吹かれると、蝉の声が響く中にも、いつの間にか秋の気配がどことなく漂っている。
長いこと寝ていたので、なんだかこの八月は半月ほどしかなかったように感じてしまう。
実際、今月の後半は、ほぼ頭が痛くて寝ていた記憶しかない。
この病は、一体なんだったのだろうか?
ここまで抗生剤が効かなかったところをみると、ペニシリンにかなりの耐性を持つ新手の細菌か、もしかしたらウイルスであったのかもしれない。
ウイルスは細菌と違って細胞をもたないからペニシリンが効かないのだ。
ウイルスは動物の細胞に寄生して、吸血鬼の如く他人のエネルギーを吸い取るのである。
そういえば時を同じくして、例のブラム・ストーカーの『ドラキュラ』も読み終わっていた。
後日談になるが、最早、完全に間に合わないと思っていた小説賞への応募用吸血気小説も、病み上がりの身体に鞭打って、自分でも恐ろしく思う早さで書き終え、投函した。
まあ、あんなやっつけで書いたものなので、全然、期待は持てないのであるが(※さらに後日談であるが、受賞は逃したものの、ぢつは講談社の『メフィスト賞』でファイナリストまでいった)。
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