1人が本棚に入れています
本棚に追加
(終わった……のか)
そう、心の中で呟いて、治樹はタバコに火をつけた。先ほどまで隣に感じていた彼女の熱は、すでに仄暗い寝室の闇に溶けてなくなってしまった。
『好きな人ができたの。だから、おしまい』
あっけなく告げられた彼女からの別れの言葉。激しく求め合ったあとで、首筋にわずかに掛かる襟足を汗で濡らしながら彼女は微笑んでそう言ったのだった。
(本当に?)
あまりに唐突で、あまりに簡単なその別れに、治樹は戸惑っていた。そのせいか、白いシーツの上にぽとりと灰が落ちても、ぼうっとしたまま夜の闇を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!